平成27年5月7日
    
第2次百年委員会 答申について
【答申にいたる経緯】

 本校創立80周年(1990年)の記念事業等実行委員会において、「百周年に向けて土佐中・高のあるべき姿を求める」ことを目的として「百年委員会」が設置され、2001年3月から活動を開始し、翌年7月に最終答申をまとめ、理事長に提出されました。その後、新校舎建築をはじめ、校内組織の改革や指導方法の改善など、答申に沿ってさまざまな施策をおこなってきました。
 百周年を目前に控え、これまでの施策の検証の上に立って、百周年からさらにその後の本校のあるべき姿について多角的に検討し、必要に応じて改善策を立案し、理事長に対して提言をすることを目的に第2次百年委員会が設置されました。岡村甫委員長の下、法人・同窓会・振興会・教職員から選ばれた委員12名の議論の末、以下のような答申がとりまとめられ、理事長に提出されました。






平成27年4月10日
学校法人 土佐高等学校
 理事長 池上武雄 様
答  申
第2次百年委員会
委員長 岡村 甫

 本校は1920年の創立以来、数多くの人材を輩出してきました。進学校として大学受験の成果を求めながらも、部活動や学校行事を通じて、他者と協力協働する力を育み、知的な面だけでなく、さまざまな面で力を備え、それぞれが置かれた場で、他者から頼りにされる存在が数多く育ってきました。同時に、ともに語らい、ともに活動する充実した時間を過ごすことを通じて、友人や先輩後輩との絆をつくり、「土佐」を中心とした繋がりも作り上げられてきました。未来に向けて力を育むと共に、中学高校時代の「いま」を大切にし、充実させることが、本校の大きな力となってきたことも肝に銘じておきたいと思います。
 建学の目的である「人材の育成」は、変わることなく堅持されるべきものです。それは言いかえれば、本校に入学した「優れた資質を備えた生徒」が適切な教育によって、その力を十分に伸ばし、将来、社会のあらゆる場でリーダーあるいは欠かせぬ存在となり得るように育つことを目指すことと表現できるでしょう。
 その目標を実現するために、「体を鍛へ心を練り徳器を高くし智能を大に」(開校記念碑文)することが従来からの基本方針であり、「知育・徳育・体育」のバランスの取れた教育、「学問・礼節・スポーツ」や「活力ある文武両道」という言葉も、その基本方針の表現です。
今後もこうした方針は堅持しつつ、少子化に代表される時代の変化に即応し、グローバル化や高度情報化のうねりの中で、より実り豊かな教育を模索していかねばなりません。この答申がその一助となれば幸いです。

1.理事会の構成
 学校としての公益性を保ち、本校の継続発展を可能ならしめるためには、理事の構成等を含む「寄付行為」の更なる改正が必要である。

2.教育内容の改善
 教育内容や方法に関しては、各教員が常に改善の努力を続けるべきものであるが、以下の項目については、校内で検討し、その結果を全教員に周知することを望む。

(1) 中学教育
大学受験までに時間のあるこの時期に、「自己」を認識し、「基礎学力」と「考える力」を付け、「グローバル社会」に向けて、自己の成長に「意欲的に取り組む姿勢」を涵養することを図る。

(@)自立と自己の確立
人間としての基本要件として「自律」と「自立」が求められることは、あえて論ずるまでもない。少子化とそれに伴う親子関係の濃密化が進行し、若者の自立はますます遅れがちになっていることに配慮し、自立を促す。
他者との交わりの中で、自己を知り、感動のある体験を積むためにも、クラブ活動などへの積極的な参加を図ると同時に、そのあり方を改善する。
また、自己認識を深めるために、総合的な学習の時間などを利用し、自分の生活の場としての学校や地域社会について学習する機会を確保する。

(A)基礎学力の定着
この時期に基礎学力を付けることは、生徒の将来にとって極めて重要である。そのためのシステムを創造すると共に、従来から行われている「読書」や「作文」の習慣づけ、「少人数学習」、「家庭での学習」などを改善する。また、IT技術を活用した反転学習など、先進の教育方法の導入も積極的に検討していく必要がある。

(B)グローバル社会に向けて
グローバル化が益々進むことは明らかであり、その社会で活躍できる人間を育むためには、若い時期に刺激を受けることが大切である。将来への意欲が高まり、学習態度の改善を図るためにも、海外経験その他の刺激を受ける機会の増大を図る。

(2) 高校におけるよりハイレベルな教育の実現
 中学校での基礎の上に、高校ではよりハイレベルの世界に向かう意欲と力を育てることが求められる。従来の取組みを一層実りあるものとするため、以下の検討を行う。

(@)高い目標への志向を育む進路指導
 安易な現状肯定に陥ることなく、自らの能力を伸ばし、活かすことのできる進路を選択するよう、働きかけを強める。その方法としては、現在行われているコース別研修のように、日本や世界のトップレベルの活動に触れる機会を持つことや、そうした分野で活躍している人物を招聘するなど、校外との接触を増やす。

(A)大学受験指導の一層の充実
 生徒の高い志望が現実のものとなるよう、しっかりとした大学受験指導を行うことは、進学校としての基本的な使命である。これまでも、さまざまな努力・工夫がなされてきているが、大学合格実績は必ずしも十分なものとは言えない。カリキュラム、教育内容・教育方法などについて、進路部を中心に、教科内・教科間で検討し、よりよい成果をあげられる努力をする。

(B)トップレベルを目指す課外活動の支援
 どの分野においてもトップレベルを目指すことは、生徒の成長にとって大きな意義をもつものである。運動部・文化部ともにそのような目標をもって活動し、一定の成果もあげている。今後さらに発展できるよう努力が望まれるが、部活動指導が教職員にとって大きな負担となることも考慮し、業務の分担や外部指導者の活用などを図る。
 また、海外研修や数学オリンピック、あるいは科学の甲子園などに積極的に参加することを促し、さまざまな分野でトップレベルに触れる機会を増やすように学校として取組む。

(3) 国の教育施策
 文科省主導によるさまざまな制度改革(大学入試制度の変更、学習指導要領の改訂、英語教育の改革等)が進められている。その内容を熟知し、カリキュラムの変更など生徒にとって不利にならないよう対応していくことは最低限の義務であることを自覚する。
「スーパーサイエンスハイスクール」や「スーパーグローバルハイスクール」あるいは「併設型中高一貫校」の指定などの「学校全体の性格付け」に関わる問題、教科間での時間配分など「校内調整」の必要な問題、あるいは教材選択・授業方法など「教科内」で検討の必要な問題など、次元の異なる課題が併存している。それらを区分しながら、かつ連携させ、望ましい方向性を見出す。

3.教職員の意欲と能力を高める方策
 高い能力をもった教職員を採用すると共に、たゆまない研修を通じてその力を高めることは、本校の命運を決定するほどの重要性をもつ。教職員が自主的に研鑽を積み、プライドをもって仕事に取り組もうとする姿勢を尊重し、さらに発展させていくために、従来にもまして、その点を重視した学校運営を図り、資金および人手を優先的に投入することを求めたい。とくに、次のような点について、改善策を校内で検討することを望む。

(1)採用
 高い能力をもった教職員を採用するために、これまでの採用方法を見直し、より広い範囲から優秀な人材を採ることができるように改善する。具体的には、採用に当たる部署の新設や、募集活動に対する資金の増額などを検討する。

(2)研修
 研修については、TSL制度により一定の成果はあげているが、長期間の校外研修なども行うことができる制度の導入を検討する。そのためには、教員増員が必要である。
当面、県内外の他校との交流を通じて、自分自身を振り返る機会をもつことも、重要な研修となるので、その定例化を図る。

(3)教員の自由時間
 教員の自由に使える時間が減少し、日々の業務に追われて忙しい日々を送っていることは問題である。教員の意欲と能力を高めるには、日々の業務に追われることなく、自由に考える時間の確保が極めて重要であり、その方策を財政的負担も考慮し、根本的に検討するべきである。
当面、校外への委託も含めた「クラブ顧問」の負担軽減、「教員と事務職員」、「クラス担任・副担任間の業務分担」などを改善する。

4.生徒募集
(1)募集定員とクラス定員
 少子化の進行の中で、募集定員およびクラス定員をどのようにするかは、今後の本校教育のあり方にとってきわめて重要な課題である。とくに、高校への志願者の減少、入学してくる生徒の多様化、とくに「手のかかる」生徒の増加といった問題への対応は、まさに「待ったなし」という状況である。もちろん、定員の問題は学校経営と直結する問題であり、教育と経営の両面からの検討が必要であることは言うまでもない。
 本校の今後にとって最善の方法を見出すために、校内で検討する場を設け、十分な議論を行ったうえで改善案を作成し、理事会に諮ることを求めたい。その検討に際して、収支の状況など必要な情報を、教職員に開示していく必要がある。

(2)生徒への経済的支援
 高等学校については、県の補助もあり、低所得の家庭に対する就学支援金の拡大支給を行っているが、中学校での支援は必ずしも十分でない。低所得の家庭からも本校に通学可能となる「奨学金制度の拡充」を検討するべきである。また、海外留学など在学中に大きな経済的負担を要する活動を支援する制度を検討するべきである。



(3)入試
 全国私立校の現状を把握し、現状の改善を図ることを望む。
 (@)県内他校と足並みを揃えている入試日程
 (A)英語入試の可否など入試科目・配点
 (B)問題の作成・印刷・配布方法や解答例の公表など入試実施に関わる諸問題

(4)広報
 広報部の設置もあって、とくに中学校への志願者は質・量ともに一定水準を確保できるようになってきているが、今後の少子化の進行はその状況を維持することを困難にする。定員枠を検討した上で、その定員を満たす質の高い受験生をどのように確保していくかは、今後の大きな課題である。中学生で親元を離れることに伴う問題は大きいが、高校生ではある程度許容される面もあろう。例えば県外の塾に対して、本校をPRするなど、県外からの受験生を増やす方策を検討するべきである。

5.財政基盤の強化について
 諸改革の実施には、当然かなりの支出が必要となる。それ以外にも、消費税率の引き上げや教育機器の整備拡充などへの支出増大もあり、さらに将来への備えも含め、安定的な財政基盤を確立することは、本校発展のために欠くことのできない要件である。以下を中心に、早急に検討することを求める。

(1)授業料などの保護者負担
 生徒募集との関係を踏まえ、校内で検討し、理事会で決定する。

(2)新しい寄附金制度の構築
 新校舎建築募金のような目的を特定した募金に限らず、広く一般的に学校運営に対する援助を目的とする「維持会」的な寄付金も含め、新たな寄附金制度を早急に構築する必要がある。そのため、学校・振興会・同窓会からなる検討組織を速やかに設けることを求める。

6.将来に向けて
 どのような組織においても、不断の改善・改革の努力がなされなければ、発展はおろか現状維持すら困難になることは言うまでもない。一方で、教育はひとりひとりのかけがえのない一回きりの人生に関わるものであり、安易な制度変更により、取り返しのつかない問題を生じさせることもあるため、劇的な変革が馴染まないものであることも事実である。したがって、理事長・校長はじめ、学校の運営に関わる者は常に新しい情報を取り入れつつ、慎重に変革の可能性を問い続けることが求められる。
 これを組織的に行っていくために、本校教育のあり方について中・長期的な視野に立って、学校内外から意見を出しあう組織の設置を検討することを求める。ある程度長期間にわたって存続させ、外部講師の招聘なども行うこの組織において、本委員会では検討しきれなかった20年、30年後の本校のあり方について、より広い視野から、本校の発展・飛躍に資する議論がなされることを期待したい。

以上








 【対応方針】

 答申を受けて、理事会・学校として次のような方針で対応していくことにしております。


1.理事会としての対応
 理事長を中心に、次の課題について委員を選出し、検討を行う。

 @寄附行為の検討
  理事の構成を中心に、寄附行為の検討を少人数の組織で行う。

 A財政基盤の確立に向けての検討
  来年度当初から新しい寄附金制度をスタートさせることを前提に、その推進組織をつ
  くる。その際、百周年記念事業との関連にも留意し、学校、同窓会、振興会からそれ
  ぞれ委員を選出する。

 B中長期的な学校のあり方の検討
  学校のあり方について中・長期的な視野から提言をしていただく、「学校アドバイザ
  ー(仮称)」制度をつくる。
   
2.学校としての対応
 今回の答申で、改善および検討を求められている下記の項目については、教頭を中心に各担当部署で検討を進めていく。

@募集定員・クラス定員、授業料など

A入試制度

B教員の採用、研修

C中高併設型やスーパーグローバルハースクールなどの検討

D高校におけるハイレベルな教育の実現

E中学校教育の充実