令和7年度 文化行事 広井先生特別授業
2025.11.13

1113日(木)、令和7年度文化行事として、『読みって推理? 〜なぞ解き国語の面白さ〜』と題した特別授業が行われました。講師は、本校国語科の元教員である広井護先生です。

授業のはじめに、広井先生からご自身の読書体験を交えたお話がありました。読書は「読む力」の土台となること、また読書は芋づる式に世界を広げてくれるものであることを教えてくださいました。

続いて、いくつかの「読みの方法」についてお話があり、授業はいよいよ金井直作の詩「木琴」の読みへと進みました。この詩は、かつて国語の教科書に掲載されていた作品です。広井先生は、「表層読み」から「深層読み」へと生徒たちを導き、限られた言葉の中に潜む多様な意味をともに探っていきました。

特に、「置き換え読み」の手法は非常に興味深く、言葉の中から無数の可能性が立ち上がってくる瞬間がありました。授業の中で先生は、「文学とは、嘘による真実への誘惑である」という印象的な言葉を紹介されました。金井氏には実際に妹がいなかったこと、また彼が戦争によって恋人を失った経験のある作家であることが略歴から語られました。先生は、金井氏が自らの体験を仮託し、虚構(フィクション)の形で表現したのではないかと示唆されました。本当に深い傷を負った人ほど、その真実を直接語ることができない。だからこそ、「兄と妹の物語」で、極限の体験を芸術へと昇華したのではないか。そう読むと、「妹」は「いもうと」であると同時に、万葉の世界における「恋人」の象徴として解釈できることもわかりました。
 さらに、詩のクライマックスに向けて「プラマイ(プラスとマイナス)読み」を行いました。そこから、「戦争に対する無念さ」(−)と「平和を願う妹の思いが天に届くことを知らせた」(+)という二つの読みが生まれます。この詩を兄から妹への手紙として読むことで、戦争への憎しみから始まり、年月を経て心の葛藤を越え、妹の願いが天に届いたことを知らせているという「深層の真理」へとたどりつく過程が見えてきました。

広井先生の特別授業を通して、限られた言葉の中に無限の世界が広がるという、文学の醍醐味を体感することができました。読書の楽しさ、読みのスリルや奥深さを教えてくださった広井先生に、全校生徒一同、心より感謝申し上げます。

広井先生、本日は素敵な授業をありがとうございました。